入塾の時点で釧路商業高校へ合格出来ないと考えた判断基準は2点です。
この2点を出来ないまま放っておくと成績は下がる一方です。
彼女もこの2点が出来ていなかったので、その時点では釧路商業の合格ラインにいるとは言えませんでした。
お母様から一つお願いをされ承諾する事にしたので、私も交換の条件として毎日通う事を約束してもらいました。
打算的なことを言うと、成績を上げるには勉強時間を確保する事が何よりも最優先だと経験上感じている事を実証してみたかったのです。
実験に使われて人権侵害だと思う方がいらっしゃるかもしれませんが、成果が上がればみんなが幸せになれます。誰一人不幸になりません。
実際に勉強時間の確保は何よりも先に取り組むべきだと分かりましたので今は全ての生徒に実践しています。
ここでこの時点での彼女の実力を少しお話しします。
では説明する私の言葉を理解できるかと言うと、それぞれの教科で必要な用語を覚えていないので伝わりません。
それ以前に日常会話の中にも聞き違いをする時があります。彼女が言う言葉も単語の羅列です。
「先生、宿題、学校で、明日、テストがあるんです。」
きっと「明日テストがあるのでその範囲の宿題が出た」と、言いたいのでしょうがある程度正しい日本語が言えるまで何時間でも待つのが月見学道での指導です。 実際に1時間以上待ったこともあります。
ここまで説明すると、教育に慣れていない方でも容易に手がかかる生徒だとイメージしていただけると思います。
では高校合格までの1年半の様子を説明します。
最初のハードルとして課した毎日通う事は割と簡単に超えてくれました。
前述したある程度正しい日本語で話せるようになるまで待たれるのは彼女にとっては苦痛だったと思います。
伝えられる言葉が見つからないと人間は泣くしかなくなります。言葉を知らないのですから赤ちゃんと同じ状況になる訳です。
泣いて伝えようとするのです。彼女は夏休み中ずっと毎日のように泣きました。でも次の日は必ず時間通りに教室に来ました。
人に対しては考える事を与えて考えた結果を聞く事を繰り返して会話力をつけていきます。人として接するのが基本です。
生徒にもお母様にも約束を守ってもらえた以上、私も本業の成果としての目標設定と達成計画を立てなければなりません。
まず現時点での志望校を聞きました。彼女は迷わず「北陽高校」と、言いました。
まだ釧路商業合格ラインに達していない時です。理由は聞きません。月見学道では私はその希望に手助けするだけです。
彼女との次の約束は「あきらめない」事。
「これから指導する内容は北陽高校合格の為に最低限しなければならない事を絞って話すので、
出来ない事が一つでも発生したら達成できないからその覚悟で挑んで欲しい。」と、話しました。
彼女は良く頑張りました。少しずつ成績が伸び、3年生の1学期には合格可能な範囲に入ってきました。
後述の成績表を見て頂くと、これで合格可能範囲と断定出来るのか懸念する方もいると思います。
生徒の様子を見て特徴を捉えたら、あと1年でどれだけ伸びるか容易に想像が出来ます。これが本当の進路指導です。
私の指導の仕方は合格範囲に入ったらあとは生徒任せです。
自立させることが目標で、社会人になった時に絶対必要な要素です。
学生の時に鍛えないからニートになる可能性が生まれてくるのです。
「親は無くても子は育つ。」と、言いますがこれは親がいないと余計に苦労をするのでしっかりした成人に成長するのであって、
親がいても子供に関心を持たなかったり、一方的に意見を押し付けるようでは自立した社会人にはなれません。
通常裁量問題グレードの練習は湖陵、江南の受験生にしかさせないのですが、彼女はそれにチャレンジして秋には数学、冬には英語を解けるようになってきました。
内申点さえ達していれば江南も合格したでしょう。あと半年早くお預かりする事ができていれば内申点も上げられたので、江南高校に進学したでしょう。
5教科とも3冊以上の問題集を解き終わりました。例年の北陽受験生なら1冊の半分も終われば合格出来るくらいの学力に達しています。
お母様も娘の成長は感じていて、普段話す内容がだんだん変わってきたとおっしゃっていました。出来れば資格を持った職業について欲しいと願っていました。
彼女はまだ成長しているので、ぜひ進学を考えてもらいたいです。
北陽高校合格発表後にお会いした時には看護師を目指すと聞きました。際限なくスキルを追及でき、その高いスキルではみんなを幸せな気持ちにさせられる素晴らしい職業です。
努力を惜しまない事を覚えた彼女には最適な職業でしょう。